アーカイブ:2018年11月

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古典とは

見上げれば
空のようにいつもそこに在るもの
踏みしめれば
大地のように支えてくれるもの

文章に作者の声が谺している
文字に人間の歴史がひそんでいる
文体と呼ばれるカラダが
意味というココロとともに
甦る古代から予感の未来へと
繰るページごとに読者をいざなう

源も行方もさだかではない知恵の道を
つまずきながら私たちは歩んでいる
先達が立ててくれた道しるべを
内なる地図に書きこみながら

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明星

眼が見せてくれた表情の奥へ
ココロは入って行く そして
かすかな哀しみを発見する
あまりにかすかなので それは
遠い水平線のようだ

眼が見つめる風景の向こうへ
ココロは旅を続ける すると
昼間は見えない星座が見える
あまりに遠くにあるので それは
生まれる前の思い出のようだ

数えきれない世界のカケラを
カメラを黙って拾い集める けれど
夢見る無限のジグソーパズルは
いつまでも完成しないので それは
幼い子どもの遊びのようだ

遥か彼方で瞬く星と
自分のココロで輝く星と
まだ出会わない星々を
見えない線でむすんでゆくと
どんな形が見えてくる?

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森の熊とテディベア

森の熊はゆったり歩く
木の間隠れのお日さま浴びて
好きな蜜蜂探して歩く

ショーウインドウのテディベアは
脚はあるけど座ってるだけ
どこへも行かないなにも食べない

森の熊は恋をする
そうしていつか生まれる仔熊
ころころころんできいきい甘える

子ども部屋のテディベアは
なにもしないで待っているだけ
誰かが抱きしめてくれるのを

森の熊は年をとる
はるなつあきふゆ五年十年
脚も弱って目もかすむ

屋根裏のテディベアは年をとらない
ただ擦(す)りきれるだけ綻(ほころ)びるだけ
だんだん値段が高くなるだけ

森の熊は死んでゆく
目をつむり落ち葉の上に横たわり
静かなため息ひとつして

アンティークショップのテディベアは
いつまでたっても目をつむれない
ガラスの目玉に世の中映して

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