アーカイブ:2018年7月

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これでいいのか

今朝トンボが窓から入ってきて
「これでいいのだ!」と言うから困った
何故ってうちの猫のムニャアは
隣の犬のワンウーと浮気していて
私はそれでいいとは思っていないからだ

だいたい腐った卵はそれでいいのか
腐った金持ちはそれでいいのか
電車が速いのだってそれでいいのかどうか
この世でこれでいいと言えるものは
生まれたての赤んぼくらいのものではないか

そうトンボに反問したところ
黙ったまま漫画世界に亡命してしまった
だがそれ以来「これでいいのだ!」
という魔法の言葉が耳について離れない
何と言っても肯定は否定より色っぽい

その後の話であるが明日散歩中に
「これでいい」ものが落ちているのを見つける
黄金色で輝きを放っているから
一目で貴重なものだということが分かる
クソ!と思わず私は悪態をつく

純金で作った人糞のレプリカは
言ってみれば本物ではない贋作である
本物を「これでいいのだ!」と言う人はバカで
贋作を「これがいい」と言う人はオリコウだ
と言うのが今の世の中なのであろうか ニャロメ

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10/19(金)谷川俊太郎&谷川賢作コンサート『聴くと聞こえる』

みなさまこんにちは。
今年は暑い暑い夏ですね。
そろそろ夏休みだよ〜!という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

さて、本日はイベントのお知らせです。
アンソロジー詩集『聴くと聞こえる』(創元社)の刊行を記念した
コンサートが、10/19(金)に浜離宮朝日ホール(東京)で開催されます。
詳細は下記をどうぞ。ぜひご参加下さい。 (スタッフ)

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10/19(金)谷川俊太郎&谷川賢作コンサート『聴くと聞こえる』

深く音楽を愛する谷川俊太郎が、
60年を越える創作のなかから、
聴くこと、聞こえるものにちなむ詩と
エッセイを選んで編んだ『聴くと聞こえる』。
本公演は、その刊行を記念して、
詩人の朗読と谷川賢作のピアノで、
この一冊を「聞こえる」ものにするコンサートです。

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日時:2018年10月19日(金)19時開演(開場18時30分)
場所:浜離宮朝日ホール(東京)
料金:一般 ​4000円(税込)25歳以下 2500円(税込・創元社のみ取り扱い・席数限定先着順)

●チケットのお申し込み
朝日ホールチケットセンター TEL 03-3267-9990
チケットぴあ TEL 0570-02-9999(Pコード:118320)
e+イープラス(http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002260770P0030001

詳しくは特設サイト(https://www.sogensha.co.jp/event/onlistening/)をご覧ください。
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生きていく

鏡に映っているのは今日のわたし
昨日のわたしとかくれんぼしている
冷蔵庫の扉にはメモがいっぱい
捨てられないのがどれかは秘密

溜まったビールの空き缶出して
駅までの坂の途中で不意に
迷っていた案件の解決が浮かび
小さな満足を自分に許す

あなたは時々オニになると
幼馴染に言われたことが忘れられない
わたしはわたしと開き直ると
余計自分がわからなくなる

生きていく 花屋の店先の薔薇のように
生きていく 父の記憶を更新しながら
生きていく 謎めいた香りの明日に向かって
生きていく ひとりで

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ある女の子の言い分

あさまやまはいつも だまっているでしょ
ふんかするときだって ことばでおこったりしない
からまつのはやしも しずかです
あきになって たえずおちばをちらすときだって

わたしもここにくると むくちになる
とかいではことばがないと ふあんだけど
ここではすまほをうちにおいたままで わたしはあるきます
だれもいないみちをあるいて かわにあいます

かわはささやくけれど それはヒトのことばではない
わたしはどうして?なぜ?と といかけるのをやめます
だってせかいは にんげんがつくる〈いみ〉でできてるわけじゃないから
にじも にゅうどうぐもも ゆきも わたしはただ だいすきなだけ

ここにいると すっきりひとりになれます
ひとりがさびしくなくなって ひとりのじぶんがすきになる
きょうのゆうやけは すごーい!
ここにいるぜいたくを ゆるしてくれているのは だれ?

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私より先にそっちへ行ってしまった人たちへ

水が滲んできているのに気づきました
空は青くどこまでも澄んで
微風が木々の枝を揺らしています
でも落ち葉が散り敷いた地面に
水が滲み出しているのです
ココロの森は行きつけの場所です
でもまだまだ知らない所がありました
泉が湧いてきていたのです
ココロの森の奥深く
音もなく泉が湧いてきて
流れずに湛えているのです
涙の比喩ではないかとお思いですか
でも私は泣いていません
泣きたいとも思っていません
泉の水は透き通っています
濁っていて当然なのに
揺れながら水に映っているのは
若かりし日のあなたがたの姿
でも私はそれを見ているのではない
泉の水は生まれながらの体内の水と
すっかり混じり合っているから
あなたがたはもう思い出の中にいない
コトバでもイメージでもない水となって
私のからだを巡っています

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暑いのに私の詩を読んでくれる人がこんなにいる!と思うのですが、涼しいところで読んでいる人もいるんでしょうね、羨ましい。私の大好きなアメリカの絵本作家M.B.ゴフスタインのおばあちゃんのはこぶね』(現代企画室)が復刊されました。そこに収められた「最期のことば」に共感し感動したので、皆さんにも読んで欲しいと思ってひとこと。(俊)

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