アーカイブ:2013年3月

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バーニンガムの絵本

 「教科書で初めて、谷川俊太郎の詩を読んだ」という方も
たくさんいらっしゃると思いますが、
最近増えているのが、小学校よりもっと前に、
「詩より先に、絵本で谷川俊太郎を知った」という人たち。

そんな絵本ファンに朗報です。
日本でも人気の絵本作家、ジョン・バーニンガムの新作『つなひき』が、
BL出版から谷川俊太郎訳で出版されました!

原書は1968年にアメリカで出版されたそうですが、このたび
バーニンガム氏自身が編集を手がけ、文章も自ら書き直して
復刊したという著者の思い入れたっぷりの1冊です。
アフリカ民話をもとにしたお話なのだとか。

いじめられっこのうさぎが、知恵を使ってぞうとかばをやりこめる…
という痛快なお話、ぜひ声に出して読んでみてください。
個人的には、口の悪いぞうとかばの罵詈雑言の翻訳が、面白くっておすすめ!
こんな悪口言われたら、思わずぷっと吹き出しちゃいそうです。 (川口)

『つなひき』(ジョン・バーニンガム作、谷川俊太郎訳)BL出版

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宇佐見夫妻

東海道新幹線三島駅前に、「大岡信ことば館」というのがあって、そこが季刊で〈ことば館だより〉を出している。2013年春号では、私も三浦雅士との対談で大岡との絆を語っているのだが、同じ号に宇佐見圭司夫人の爽子さんが〈我が分身〉と題した文章を書いていて、「私と圭司は十九の時に出会いました/お互いを必要とした五十三年間でした。」に始まり、圭司の見事な臨終の様子を語るその四頁に胸を打たれた。

画家・宇佐見圭司の名著『廃墟巡礼』のあとがきに、こうある。「旅の記録はノートパソコン、カメラを持参した妻爽子におぶさっている。僕の撮った写真は一枚もない。(中略)旅の途中で、彼女は還暦を迎えた。私もまた、本書が出版される頃には同じ年月のめぐりを経験していることだろう。『廃墟巡礼』は、私たち自身の廃墟の輝きを追う旅でもあったかもしれない。」

宇佐見夫妻とはそんなに深いつきあいではなかったが、二人の文章が響き合うのを読んで、つきあいが深まったような気がする。(俊)

 

 

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土産

寝室にこんな絵がかかってる。始めはちょっと不気味だったけど、そのうち愛着が湧いた。オーストラリア先住民、いわゆるアボリジニの絵描きの作品。シドニー作家祭に行ったとき、参加した現地の詩人達が土産にプレゼントしてくれた。裏に全員のサインがある。懐かしい。

美術の世界ではある種の前衛と原始美術、それにアールブリュットの境界がつけ難い。文学の世界ではそうはいかないのは、やはり言語には意味がついて回るからだろうか。草間彌生の水玉はグローバルに増殖するけれど、言語はああいう風には増殖できないし、高値もつかない。

詩はどこへ行っても〈只ほど高いものはない世界〉の筆頭だ。(俊)

 

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血圧

歩きかたにフワフワ感がある、何もしていないのに右手、右足にしびれを感じる。5年間に買った埃だらけの血圧計を引っ張り出した。なんだかヤバそうな数値、病院へ行ったら降圧剤を2時間ほど点滴された。一気に60も下がったのがかえって恐かった。目下神妙に薬を飲んでいます。

ここのところ詩を書くのが楽しくなって、暇さえあれば書いていた。ありものの編集を含めれば4冊分ほどの仕事をしていた。それがストレスになっているとは信じ難いのだが、楽しいと思ってるのはココロの表層のほうで、カラダにむすびついたもっと深いところでは、ストレスになっていたのかもしれないとも思った。そうしたらMac開けるのが不安になった。

書くこと以外のストレスなら、この時代いくらでもあるからいちいち言いたくない。耳をふさいでも侵入してくる騒音に世界は飽和しているから、静けさに飢え乾く。自然の中に逃げ出す暇がないので好きな音楽でごまかす。いまリピートしているのは、ベートーベンの弦楽四重奏曲no.6のアダジオ。 (俊)

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服部みれいさんとの朗読会@自由学園明日館

2013年3月3日は自由学園明日館の講堂にて
服部みれいさんとの朗読会でした。

意外なことに、お二人はこういった形で共演するのは今回が初めて。
俊太郎さんのポエメールに、みれいさんがお返事詩、「レス詩」を書いて
送ってくださったのが、この朗読会をやるひとつのきっかけとなりました。

朗読会では、ポエメール&レス詩を交互に朗読したり、
この日に先行発売となったみれいさんの処女詩集、
『だからもう はい、すきですという』(ナナロク社)から朗読したり、
創作についてのお二人のお話や、質疑応答、二人の私物大放出の
抽選会もあったりして、濃密な2時間でした。

会場で聞いていたお客様の中にも、ご自分で詩を書いたり、短歌を書いたり
している、という方が結構いらっしゃったようなのですが、
みなさん口々に、「創作をする者として、谷川さんの、みれいさんへの
詩のアドバイスがものすごく参考になった!」とおっしゃっていたのが
とても印象的でした。

これについては、ぜひまた改めて、整理して書いてみたいと思います。
編集という仕事をしている私にとっても、たいへん貴重な機会でした。

つくづく、俊太郎さんって質問受けるの大好き、というか、
「よい質問に対しては、真正面から受け止めて、真摯に答えてくれる」
のだなあと感じたひとときでした。

詩って、やっぱりおもしろいです。

お集まりいただいた250名近くの皆様、ありがとうございました。

終了後の打ち上げにて、俊太郎さん、服部みれいさん、加藤俊朗先生。
加藤先生は、俊太郎さんとみれいさんの呼吸の先生でもあります。
この日は、なんと京都でのお仕事が終わった後に、
打ち上げ会場にかけてつけてくださいました!
加藤先生、ありがとうございました~。

当日の記録写真などは、またこちらで公開していきます。
写真は、森栄喜さんにお願いしました。

どうぞお楽しみに! (川口)

 

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