ゴダールのユーモア
ゴダールの初期の短編《水の話》を見た。無声映画時代のドタバタ喜劇で有名なマック・セネットに捧げられている1958年の作。雪解け水で洪水になった村から学校があるパリへバスで向かおうとする娘が主人公。長靴借りたり小舟に乗ったりしてるうちに、若い男の車にヒッチハイクすることになる。
この娘がナレーターになってのべつまくなしに喋っている。「ペトラルカと同様、私もむしろ逸脱によって主題を語るの」運転手の若者は車の自慢ばかりだが、結局車も立ち往生、二人はいい仲になってしまう。カットインする空撮の洪水報道の映像、目まぐるしく次々変わる音楽、テンポのいい面白さは報告するのもまどろこしい。
もともとトリュフォーが長編の撮影に入るまでに撮るはずだったが、水が引いてしまって断念した後をゴダールが受け継いだのだそうだ。僅か12分の短編だが、ゴダールの才気、ユーモアのセンスが十分に楽しめた。エンドクレジットも字幕ではなくて娘の声、計算された無造作な感じが最高。(俊)
*DVD『アラン・レネ/ジャン=リュック・ゴダール 短編傑作選』紀伊國屋書店
