アーカイブ:2012年11月

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モールス符号

YouTubeで「つぶやく街灯・高橋匡太+oblaat(谷川俊太郎)」を見た。見てもらえれば分かるのだが、街灯や建物の明かりが、長短2種の音の組み合わせで言葉を送るモールス符号にシンクロして、点滅をくり返すのだ。で、何を通信しているかと言うと、これが私の書き下ろしの詩〈トンツー〉。明かりの点滅とトンツーの音だけでは、分からない人がほとんどだろうから、下に詩のテロップが流れる。

短波放送を聞くのが好きなラジオ少年だったから、受信送信ともに出来ないのに、モールス符号の音には懐かしさと同時に、ドラマを感じる。遭難信号も今は声で〈メイデイ〉だが、声を無線で送る技術がなかった頃は、トンツーで送る〈SOS〉だった、(多分タイタニックも電鍵で打った)。そんな背景を知っているから、モールス符号を詩にするのに苦労はしなかったし、それが紙上の活字ではなく、現実の空間を流れたのに不思議な感動を覚えた。(俊)

*「つぶやく街灯・高橋匡太+oblaat」
http://www.youtube.com/watch?v=hd-bUzUKKxg&feature=related

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電話口で

好きな詩はそんなに多くない、まして電話口で友だちに読んで聞かせたくなる詩となると、出会えるのがほとんど奇跡だと思えるほどだ。ついこの間、この詩に出会った、正確には再会した。
 

 ひるのつき

いつかきた
さむいまち
かたきのかおも
わすれはて
のきばであおぐ
ひるのつき

 
作者は辻征夫、亡くなって12年、『余白の時間』という小さな本が出た。友人の八木幹夫さんの講演を書籍化したもので、副題は〈辻征夫の思い出〉。

辻さん、八木さんとは私は句会で一緒に下手な俳句を作っていたことがある。そのころのことを思い出して、懐かしい以上の気持ちになって胸が迫ったのは我ながら意外だった。八木さんの文章も辻さんの詩も、作者の人柄を感じさせて、読む者の気持ちをほんわかさせてくれる。こんなことは現代詩の世界では滅多に起こらない。(俊)

*『余白の時間』 シマウマ書房刊 1000円+税

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