今週の一篇

十五歳

十五歳
戦争は終っていた
いつも腹ぺこだった
蓄音器のゼンマイを巻いて
ベートーベンを聴いた
学校が嫌いになった

十五歳
いつも独りで本を読んだ
星空を眺めた
宇宙が身近になった
裸の女の人の夢を見た
木漏れ陽を浴びて歩いた

十五歳
会社勤めはしたくなかった
でも生きていきたいと思った
初めてコーラを飲んだ
アメ車に憧れた
また戦争が始まっていた

十五歳
あなたは?

* * * * *

泣く父

父が泣いているのを見た
新聞を読むふりをしていたけれど
後ろ姿で分かった
母がちらっと私を見た
私は目をそらした

どうして泣いているのか
母は知っているのだと思った
私は知りたくない
父が泣くのを見たくない
なんだか恐くなってくるから

父が立ち上がって台所へ行った
ビール缶音立てて開けた
つけっぱなしのテレビから
わざとらしい笑い声が聞こえる

* * * * *

いいんじゃないの

うんこはくさくて いいんじゃないの
そらはくもって いいんじゃないの
いのちはうまれて しぬんじゃないの
あめにまけても いいんじゃないの

きんはたかくて いいんじゃないの
かえるはけろけろ いいんじゃないの
あいはただでも いいんじゃないの
やきもちくろこげ いいんじゃないの

くろでもしろでも いいんじゃないの
あっちかこっち いいんじゃないの
じぶんできめれば いいんじゃないの
いいんじゃないので いいんじゃないの

いいんじゃないのは よくないよ
そんなこえが きこえてくるよ
いいんじゃないか それもまた

* * * * *