今週の一篇

はらっぱ

はらっぱでこどもらがはねまわっている
このくにでもあのくにでもはねまわってる
むかしからこどもらははねまわっていた
これからもはねまわるだろう うんがよければ

おとなはわらいながらそれをみまもる
それをえにかく うたにする おはなしにする
それからそれをおもいでにして
せんそうをしによそのくにへでかけていく

はらっぱでこどもらが ねている
どうしたのだろう
こどもらはいつまでたってもおきあがらない
おとなはもうはらっぱにもどれない

いつのまにか はらっぱはほりかえされて
おおきなふかいあなぼこになった
そのうえにたかいたてものができた
うんよくおとなになったこどもらがたてたのだ

しんでしまったこどもらのことを
いきているこどもはがっこうでまなぶ
こうていでこどもらがはねまわっている
うつむいてひとりでたってるこもいる

『バウムクーヘン』(ナナロク社)より

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チチのこいびと

うちのチチにはこいびとがいます
わたしにはわかります
ハハにはないしょです

わるいことをしてますが
チチはあくにんではない
こいびとのひともきっと
わるいとおもいながら
チチをすきになってしまったのです

わたしはハハとふたりで
せんたくものをほしています
チチのこいびとはひとりで
なにをしているのかな
おひさまはあたたかいけど
わたしのこころはすこし
ひんやりしています

『バウムクーヘン』(ナナロク社)より

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はじめてのきもち

はじめてのきもちで
むねがいっぱいになって
どうしていいかわからない
なみだがじわっとわいてくるけど
なきたいんじゃない
かなしいんじゃない
なまえがつけられないきもち

からだのなかにいずみがあって
そこからわいてくるのかな
こんなきもち はじめてのきもち
おとなはみんなしってるのかな
だれかにいいたいけど
なんていっていいかわからない
じぶんだけのひみつのきもち

『バウムクーヘン』(ナナロク社)より

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この夏、俊太郎さんの新しい詩集『バウムクーヘン』が刊行されます。
8月は「今週の一篇」のコーナーで、この『バウムクーヘン』からいくつか詩をご紹介したいと思います。
装画は「ミッフィー」などで日本でも大人気のディック・ブルーナさん。
ブックデザインは、名久井直子さん。8月中旬から順次、全国書店さんに並びますので、ぜひお手にとっていただけたらうれしいです。本の角がちょっぴり丸くなっているんです、かわいいんですよ…!(スタッフ)

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