本当の詩集

これまでに本当の詩集に何度か出会った
郵便で届いたのもあるし
路上で金銭と引き換えたものもある
みな控えめな姿をしていた

本当の詩集の中の言葉が
すべて本当の言葉だとは限らない
ただ手書きの文字や活版の活字の群れに
肉声がひそんでいたのは覚えている

本に似ていたが本ではなかった
値段がついていたが商品ではなかった
人間が生み出したものが
人間からはみ出そうとしていたのかもしれない

本当の詩集が荒れ地で半ば泥に埋もれている
だが中の言葉は朽ちていない
本当の詩集を誰かが月面に忘れていった
深い静けさのうちにそれは無言で呟いている

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