畑にて

泥んこの中から生えてきて
なんで大根はあんなに白いんだと言ったら
土の下から人参がわたしは赤いのよとのたまう
そばでアスパラはほんのり薄緑
日の光はもちろんお喋りなんかしない

そよかぜにくすぐられてヒトはほほ笑み
許されるままにアスパラをつまみ食いして
原子レベルで考えればこれは共食いじゃんかと
頭の中でらちもないことを思っているが
そんな頭はみみずにはまったく無用の長物

地面ていうのはもともとでっかいお皿で
上には食べきれぬほどの御馳走がてんこ盛り
人生は意味において不可解だとしても
味わいにおいては泣きたいような美味しさ
流れ雲がゆったりおれたちを見下ろしている

大根も元をただせばビッグバンから生まれてきて
なんやかんや枝分かれして今や我らは人間
愛の究極は食うことだと手前勝手な理屈こねつつ
いくつになっても大地の乳房にむしゃぶりつく
(そんなこと言えるのも言葉あってこそ)

だが畑をぶらつくこの恵みのとき
言葉はアタマを通らずカラダに直結
ああとかおおとかうーんとか口ごもるだけ
かそけく都市に毛根を下ろすおれたち
せめて大根のごとき確かな脚をもちたいと願う

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